2017/6/9 サブと遊んだ日

2017年6月9日(金)

天気:晴れ

 

今日は、サブと会った。

お昼過ぎ、最寄りのバス停からバスに乗って、恵比寿に向かった。よく晴れた、気持ちの良い午後だった。いつも通り、僕は10分ほど遅刻した。待ち合わせのカフェに入ると、サブはソファ席に座り、不思議な色の飲み物を飲んでいた。いつも通り、サブは僕の遅刻に文句ひとつ言わない。いいやつだ。僕は日替わりランチを注文した。いつも通り、僕らは他愛もない話をした。お互いの近況について、玄米食について、僕の類稀なる文才について、などなど。のんびりお喋りしながら食後のコーヒーを飲んでいると、サブが言った。

「ハルくん、スタジオ行こう」

スタジオ?スタジオって、あのスタジオ?俺、スタジオなんてもう何年も行ってないよ。そもそも、ベースもギターも久しく触ってないよ。ふとサブを見ると、既に電話をかけていた。

「もしもし?今日空いてますか?」

サブの代名詞と言っても良い、圧倒的な行動力。思い付いたことを即実行する、圧倒的なスピード感。僕らは会計を済ませ、迷いなくスタジオへと向かった。

恵比寿ガーデンプレイスの手前、アメリカ橋を渡った先の住宅街の一角に、そのスタジオはあった。地下に降りると、白に近い金髪の男性スタッフが出迎えてくれた。僕らは二人とも手ぶらだ。「こんな急に来る人、珍しいですよ」。そりゃそうだろう。店内にはスタジオらしからぬ、ボサノバ風の小洒落た音楽が流れている。僕らは受付を済ませ、フェンダーのベースを借りてスタジオの部屋に入った。

僕がベースをアンプにつないでいる間、サブは早速キーボードの前に座り、自由自在に鍵盤を操り出した。僕はサブのピアノに合わせて、そろそろと音を探りながら、久しぶりにベースを弾いてみた。指が全く動かない。想像以上に動かない。昔はレッチリとか弾いてたのに。昔コピーした曲のベースラインも、全然覚えてない。かろうじて思い出せるのは、ジャミロクワイのトラベリング・ウィズアウト・ムービングという曲(素晴らしいタイトルだ)のファンキーなベースラインと、インキュバスのインストナンバー(曲名忘れた)のグルービーなベースライン。どちらもシンプルで、基本は同じフレーズの繰り返し。僕は動かぬ指を必死に、何とかベースの体を保とうとした。サブが僕にコード進行を告げる。僕は何とかコードを探り、とりあえず音を出す。簡単なセッションにしばらくトライした後、サブがドラムセットの前に移動する。ドラムスティックを持って、疾走感溢れるビートを刻み出す。こ、こいつ、こんなにドラムも叩けるのか!僕はドラムに合わせ、やはりジャミロクワイのベースラインを弾く。なかなかリズムが合わないが、楽しくなってきた。やはりベースは、ドラムと合わせるのが楽しい。下手でもそれっぽくなるし。しばらくすると、サブは一度部屋を出て、エレキギターを持って戻ってきた。ギターをアンプにつなぎ、ロックなリフをかき鳴らす。こ、こいつ、こんなにギターも弾けるのか!何ていうマルチプレイヤー!一介の企業経営者にして雑誌編集者でありながらプロのヒッチハイカーであり、おまけにあらゆる楽器を自由自在に扱うのか!しかし一番の驚きは、今から8年ほど前にアーバンニートというバンドを一緒に組んでいたとき、サブのパートはボーカルだったということだ。それはアーバンニートが約2ヶ月で解散したという事実より、驚くべきことだ。僕はサブのギターに合わせて、既に痛い指でベースを弾いた。やがてベースに飽きた僕は、大して叩けないドラムを叩き、大して弾けないピアノを弾き、大して弾けないギターを弾いた。気付いたら、既に1時間以上経っていた。時間が過ぎるのがこんなにも早く感じられたということは、かなり楽しかったのだろう。僕らは楽器を置いて部屋を出て、会計を済ませて外に出た。

極めてスリリングなセッションを楽しんだ僕らは、お茶をしようと駅の方に向かった。途中、サブの知人にバッタリ遭遇し、なぜかみんなでセルフィーをした。これも一種のセッションなのだろう。その後、サブと僕は駅前のルノアールに入った。僕らはアイスコーヒーを飲みながら、再び他愛もない話をした。女の子の話とか、女の子の話、それから女の子の話。サラリーマンしかいない金曜夕方のルノアールで、スタジオ帰りの二人のアラサー男子は、恋バナをしていた。僕らは協議の末、B末(B型の末っ子)の女性は極めて厄介な存在である確率が高い、という結論に到達した。厄介な存在とはつまり、魅力的な存在ということだ。僕らは互いの健闘を讃え合い、時計の針が17時を回る頃、会計を済ませて店を出た。

夕方の恵比寿駅前は、いつも通り賑やかだった。昼間はかなり暑かったが、少し涼しくなった風が気持ち良い。忙しなく人が行き交う駅の改札前で、共にTシャツ手ぶらの僕らは、まさに自由の象徴だった。自由の女神か、俺か。そう思った。ジーンズのポケットに財布とiPhoneを入れ、両手に自由を掴んでいた。僕らはその手で握手をして、じゃあまた、と言って別れた。

良い1日だった。