One More Out

9回裏、2アウトランナーなし。

右腕はこの日、27人目の打者を迎えていた。球数は100球を少し超えたところ。ここまで奪った三振は14。打たれたヒットはゼロ。フォアボールもエラーもゼロ。スタンドのファンは立ち上がり、ざわついている。場内の視線全てがピッチャーマウンドに注がれる。右腕は大きく息を吐きながら首を回し、ゆっくりとマウンドに右足を置く。打者は左打席に入ると、バットを回し、右腕を見る。グッと膝を曲げ、バットを肩の上で寝かせ、構えに入る。右腕はじっと捕手のサインを見る。首を縦に振る。捕手が右手を引っ込め、ミットを大きく構える。右腕は再び大きく息を吐き、セットポジションに入る。マウンド上で一瞬、動きを止める。場内に緊張が走る。右腕がゆっくりと左足を上げる。打者がバットを握る手にグッと力を込める。右腕は体重を右半身から左半身へと移しながら、投球モーションに入る。左足が大きく前に出て、次の瞬間、右腕がしなるように弧を描き、手のひらから豪球が放たれる。ボールは激しく回転しながら、捕手のミットに向かっていく。打者が目を見開き、バットを持つ手を動かす。キャッチャーミットの手前、ホームベースの上で、ボールとバットがぶつかる。ボールは今来た道を戻るように、ピッチャーマウンドに向かって跳ね返される。投げたばかりの右腕は慌てて反応し、足元にグラブを出す。打球は凄まじいスピードで右腕の足元に向かってくる。場内の時が止まる。次の瞬間、ボールは右腕の足元をすり抜け、セカンドベースの横を通り、センター前に抜けていく。場内に悲鳴が漏れる。右腕は後ろを向き、打球の行方を見つめる。打者はファーストベースに走りながら、どうだと言わんばかりの顔を右腕に向ける。右腕は苦笑いを浮かべる。ボールがマウンドに戻ってきたところで、ダグアウトから監督が出てくる。右腕は監督とチームメイトに背中を叩かれ、ゆっくりとマウンドを降りる。場内からは拍手と大歓声が巻き起こる。右腕は帽子を取り、少し悔しそうな顔でファンの声援に応える。ダグアウトに戻ると再び、チームメイトたちが右腕に声をかける。右腕はやはり少し悔しそうな顔で、ダグアウトの裏へと消えた。

9回裏、2アウトランナー1塁。